40年ほど前の私が医者になったばかりのころの話です。新米医者の指導をする医者を昔はオーベンといいました。ドイツ語で「上」という意味です。そのオーベンの先生から「君は骨折をしたことがあるかい?」と尋ねられました。私が「いいえ、ありません」と答えると、オーベンの先生は「骨折をするとギプスをするね。これからの整形外科医の人生の中で、君は数えきれないほどのギプスを患者さんに巻くと思うが、ギプスをするとどんな感じなのか医者は自分で知っておいた方がいい」と言いました。そして「足首にギプスを巻いて半日暮らしてみよう」といってギプスを巻いてくれました。
もちろん骨折はしていないのですが、ギプスを巻くと足首が固定されるので歩くのも大変。なによりとんでもない違和感がありました。お昼から半日ギプスを巻いたまま仕事をして、夕方ギプスを切ってもらいました。ギプスを切ってすっきりするかと思ったら、やっと自由になったのに足首の関節が動かないのです、自分で動かそうとするとちょっと痛みを感じます。ギプスを巻いた時もそうでしたが、ギプスをとった時はそれに劣らぬ違和感があったのです。普通の感覚にもどるのに30分ほどかかりました。たった半日、関節を動かさなかっただけでこうだったのです。ましてやギプスを何週間もつけていたら関節が硬くなるのは当たり前だと納得しました。
これと同じことが誰でも毎日起こっています。さてなんでしょうか。それは朝、です。寝ている間は関節の動きが少ないので、朝、目覚めた時に体全体がごわごわするのは当然。動かし始めて少し経つと体がほぐれてくるのです。寝たきりの人は、介護のため寝返りの体位交換をするだけでとても痛がります。これもからだが硬くなっているため少し動かしただけで痛みが生じるからです。人間の体は動かさないと痛くなります。逆に痛みを取るには運動してからだを動かすことが大切なのです。
MGプレス 動いて健やかに91
2026年6月30日掲載
