桜が咲き終わりいよいよ本格的な登山シーズン。北アルプスの山小屋では忙しい準備の日々がはじまっていると思います。私のクリニックはあがたの森の近くにあり、北アルプスがよくみえます。北から蓮華、針ノ木、餓鬼、燕が連なり、表銀座の稜線を越えて大天井、そして常念岳へ。常念の左の肩からは槍ヶ岳の穂先が顔を出し蝶が岳に続きます。
私は学生時代、夏になると北アルプスによく登りました。仲間とテントを担いでの縦走が多かったのですが、医者になってからは山小屋に泊まるようになりました。山小屋のご主人と顔見知りになり、夜、ビールを片手に山にまつわるいろんなお話を聞きました。数十年経っても北アルプスの山頂を眺めるたびに、そんな思い出がよみがえります。
北アルプスの主だった山小屋には、夏になると山岳診療所が開設されます。母校の信州大学が常念岳に山岳診療所を開設したのは私が医者になった40年ほど前。私も開設初期の十数年間、診療に協力するため毎年常念を訪れていました。
私は松本生まれと松本育ち、幼稚園から大学まですべて松本市内に通った生粋の松本っこですが、松本平に生まれ育っても北アルプスに一回も登ったことのない人はけっこういます。私の祖父母や両親も北アルプスの峰々の名前を生涯知らずに、全部まとめて「西山」と言っていました。大学時代も地元出身者はあまり山には興味がなく、むしろ県外出身の学生がせっせと山に登っていました。
登山は素晴らしいスポーツですが、山ではほんの小さな体の不調が事故につながってしまいます。足の趾一本の痛みで歩けなくなることもあり、それは時に命の問題になりかねません。ほとんどのスポーツは体調不良になればその場でやめることができますが、登山はそうはいかないのです。自分の体力を過信せず、しっかり体調をセルフチェックして安全に山登りをしてください。
MGプレス 動いて健やかに88
2026年4月28日掲載
