足首をひねった患者さんが受診しました。くるぶしが腫れています。少し足を引きずって歩きますが、痛みはそれほどではありません。診察してレントゲンを撮ってみたら、くるぶしの先っぽにほんのわずかなひびがありました。私は「ひびが入っています」と患者さんに告げました。患者さんは「ひびですか。骨折じゃなくてよかった」とほっとしています。私は「実はひびも骨折なんですよ」と話すと、患者さんはびっくりして「え、ひびも骨折なの?ひびはひび。骨折と違うんじゃないの?」と聞かれました。
「壁にひびがはいる」というように、割れ目やきれつ亀裂の事をひびといいます。ところが医学用語にひびという言葉はありません。整形外科の用語集で探してみても「ひび」という言葉はないのです。一般に骨のひびといわれるのは、レントゲンで亀裂があるけれど、完全には折れていない骨折のことをいいます。あるいは折れてはいるけれど、全くずれておらず骨折部が安定しており、動かしてもあまり痛みがない骨折です。こういう骨折は「不全骨折」とか「転位のない骨折」といいます。つまりひびも骨折のうち。ネットで「ひびと骨折」と検索するといろんな記事がみられますが、医療機関のものは「ひびは骨折の一種」と説明しています。
だからひびでもカルテには「骨折」と書きます。ひびだと思って診断書をみたら、骨折と書いてあってびっくりした患者さんもいます。骨折というと、とても重症のように思いますが、「ひび」といわれると、それほどでないように感じます。もちろん医者が患者さんとお話しする時は、患者さんにわかりやすくなるように、ひびという言葉を使います。医者同志で会話するときにも普通にひびと言いますが、英語でクラックと言ったり、昔、医学用語がドイツ語だったころは岩壁の割れ目を指すリスと言っていました。骨折にはいろんな種類があります。
MGプレス 動いて健やかに59
2024年10月22日掲載
