膝に痛みがある70代の女性の患者さん。湿布を貼ったり膝の運動をして上手につきあっていました。ある日、家の中で転んで膝を打ちました。軽くぶつけただけなのに、その晩から痛みが強くなりました。受診した時、膝は腫れて熱をもち激痛のため曲げ伸ばしも歩くこともできませんでした。腫れた関節に針を刺すと、黄色く濁った水がコップ一杯ひけました。すると痛みはすっと引いて歩けるようになりました。
激しい関節痛が急に出る病気といえば痛風ですが、この患者さんの病気は痛風とは似て非なるもの。この病気の名前を偽痛風、つまり「偽の痛風」といいます。痛風は足のおやゆびの付け根が痛くなる中年男性の病気。偽痛風は痛風より高齢の方に多く女性もなります。偽痛風は膝や手首など、痛風より大きい関節が痛くなるのが特徴です。
誰にでも関節には潤滑油の役割をする透明な関節液が少量あります。この関節液に結晶ができると炎症がおこって痛くなります。痛風の時は尿酸の結晶ができますが、偽痛風ではカルシウムが結晶を作ります。結晶が関節炎を起こすので、痛風と偽痛風をまとめて結晶性関節炎といいます。結晶性関節炎の関節液を顕微鏡で検査すると結晶の種類がわかり、痛風か偽痛風か区別できます。偽痛風の患者さんをX線検査すると、関節にカルシウムからできた石灰がたまっているのがわかります。
急に偽痛風で痛くなるのを偽痛風発作といいますが、この発作は衝撃やストレスがきっかけになって起こります。この患者さんも転んだことがきっかけになりました。偽痛風はふつう数日で痛みがなくなります。ただその数日間の痛みが強いため、お薬を使ったり、関節の水を抜いたりする治療が必要です。また偽痛風かと思っていたら、関節にばい菌が入っていたりすることがあるので、しっかりと検査をしなければいけません。急に関節が痛み出して、腫れたり熱を持つようなら整形外科を受診してみてください。
MGプレス 動いて健やかに64
2025年1月28日掲載
