同じ「ゆび」でも、手のゆびは手偏の「指」、足は足偏の「趾」と書き、医学用語ではそれぞれ手指、足趾といいます。手の親指は医学用語で母指といい、足で一番大きい趾は母趾といいます。ところがこどもは親指をお父さん指といい、人差指をお母さん指といいます。親指は医者にとってはお母さんで、こどもにはお父さんなのはなぜなのでしょうか。
趾の爪を上からみると両側が弯曲していて、肉に接しています。この両端の弯曲が普通より強くなるのが巻き爪。巻き爪は母趾に起こりやすいのです。巻き爪がさらに肉に食い込んでくると、そこが赤くなって腫れてきて炎症を起こしてしまいます。この状態を陥入爪といいます。ここにばい菌が入って化膿すると、膿が溜まったり、それが長く続くとまわりの肉が盛り上がって赤いこぶのようになる肉芽ができることがあります。
ほおっておくと母趾全体が化膿して瘭疽になったり、骨までばい菌が入ってしまう骨髄炎になったりするので、治療が必要です。私が医者になった40年ほど前は陥入爪の患者さんには手術をしていました。趾に麻酔をかけてから、化膿した爪の端を切除して縫い合わせるのです。最近は爪に金属やビニルチューブ、テープなどを固定して、歯の矯正のように時間をかけて爪の形を整える、手術をしないで治すさまざまな方法が開発されています。
爪を切る時に、つい両端の肉に接している際まで切ってしまいがちなのですが、両端はそれほど深く切らず爪の先を水平にそろえるくらいがいい切り方。足の状態が悪くなると足だけの問題に留まらず全身に影響してきます。足は歩く基本となるところ。足の手入れのことをフットケアといい、爪や趾、足裏の皮膚の手入れが健康維持のために重要です。
MGプレス 動いて健やかに79
2025年11月4日掲載
