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加齢の痛み 心の持ち方で対処【MGプレス連載- 動いて健やかに72】

整形外科一般

腰が痛い70代の患者さんから「(とし)のせいだで、しょうがねえかいね?」ときかれました。年、加齢、老化のような言葉はあんまり聞きたくないのですが、腰や関節の痛みは加齢と関係することがあるのです。変形性腰椎症、変形性関節症のように病名に「変形性」がつく病気は加齢と関係します。腰や関節の加齢による変形には個人差があり、顔のしわや白髪と同じようなもの。40代で髪の毛が真っ白な人もいれば、80代になっても白髪(しらが)が一本のない人だっています。

中年以降の患者さんの腰や関節のX線検査をすると、たいてい加齢による変化があります。ただこういう加齢の変化が痛みの原因とは限りません。「(とし)のせいだから死ぬまで治らない」という患者さんがいますが、そんなことはないのです。変形があっても全く痛みがない人がいれば、X線でほとんど変形がないのに痛みが強い人もいます。だからX線検査での加齢の変化を必要以上に気にすることはありません。加齢は全ての人がなるもので、過度な心配は不要です。

60代の私も腰や関節の痛みだけでなく、からだのあちこちが調子悪くなることがあります。そんな時思い出すのは、私が医者になったばかりの40年ほど前のこと。明治生まれの当時80代の女性の患者さんが腰痛で通院していました。今ほど腰痛の治療は進歩しておらず、痛みがすっきりとれないでいたのですが、この患者さん、診察のたびに「腰が(いて)えのも、生きてる証拠だいね」といって笑っていました。痛みがあっても、それを受け取る人のこころの持ち方で痛みの感じ方を変えることができるのです。この話は拙著「腰痛は歩いて治す」(講談社現代新書)に詳しく書きました。加齢や痛みを悪いもの、許されないもの、必ずやっつけなければいけないもの、と決めつけず、こころにゆとりを持てばうまく対処ができるかもしれません。

MGプレス 動いて健やかに72
2025年7月1日掲載

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