「病は気から」
よく聞くこのことわざ、「病気は気持ちが原因」という意味に受け取ってしまいがちです。でも本当にそうでしょうか。どんな病気でも原因が気持ちだけのわけがありません。必ず体のどこかに問題があるはずです。気持ちを切り替えたからといって病気が治るというものでもありません。「『病は気から』なんて言う人は自分が健康だから、病人の気持ちがわからないんだ」と言いたくもなります。私自身も還暦を過ぎ、体のあちこちに不調を感じることもしばしば。そんな時、私はすぐにネガティブに考えてしまい、気持ちだけで体が治るはずがないと思います。
「病は気から」は、そういう意味ではないのです。慢性の腰痛を抱えるAさんとBさん、どちらも医者から加齢によるものだといわれました。Aさんは自分の腰痛を「死ぬまで治らない」と受け止め、ものごとに消極的になり家にひきこもる時間が増えました。Bさんは「腰が痛くてもできることからやってみよう」と考え、なるべく外に出て無理のない程度にからだを動かすことにしました。さて結果は、というと、みなさんご推察の通り「できることからやってみる」と考えたBさんの方が、腰痛がよくなってきたのです。この事は拙著「腰痛は歩いて治す からだを動かしたくなる整形外科」(講談社現代新書)で詳しく説明してあります。病気にかかっても、過度に不安にならず気持ちをポジティブにもっていくことが大切。つまり「病は気から」というのは「病気になっても気の持ちようで痛みや病状はかわる」という意味なのです。四十年近く医者をしていて、このことわざに一面の真理があることが私にもわかってきました。
老化や病気は全ての人が経験するもので誰も逃れることはできません。老化や病気とつきあっていくということは、決して諦めるということではなく、それこそが治療の第一歩なのです。
MGプレス 動いて健やかに62
2024年12月17日掲載
