骨粗しょう症は日本で1200万人がなっているといわれます。この数は全国民のおよそ10%であり、70歳以上の女性では半数以上です。
では骨粗しょう症は遺伝するのでしょうか。これについては研究機関でさまざまな研究がされています。
病気の二大原因
病気の原因は大きく環境と遺伝の二つにわけられます。
関節リウマチなどの病気も、さまざまな研究からこの二つの要因が複雑に組み合わさって発症するといわれています。
このうち「遺伝要因」は親から子に伝わる特徴で、この特徴のことを医学的には「形質」といいます。
顔や身長と同じように骨も親に似る
顔や身長が親に似るように、骨も親に似てくるのは当然のことです。「骨」という形質が親から子に遺伝するからです。
「遺伝」は多くの病気の原因です。しかし「遺伝」は「親がその病気なら子供は必ずそうなる」ということではありません。あくまで「確率」の問題です。
骨粗しょう症による骨折の特徴
骨粗しょう症になると脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)といわれる骨折がおこります。これは通常では骨折が起こらないような強い衝撃のない動作でも骨折が起こることをいいます。
自宅内での転倒やしりもちくらいのことで簡単に骨折してしまいます。腰骨の骨折(腰椎圧迫骨折)や、太もものつけねの骨折(大たい骨近位部骨折)などをおこします。こういう骨折を両親のいずれかがしている場合、骨粗しょう症によりその子供も同じような骨折をしやすいことがわかっています。
骨粗しょう症によって骨折する確率がわかる
遺伝や環境の要素を、ある計算式にあてはめると、今後どれくらいの確率で骨折するかがわかる方法が開発されています。FRAXという方法で、インターネットで公開されています。
この中で、骨折を起こしやすい人をみつけるためのチェック項目があり、その一つに「両親の大腿骨近位部骨折歴」という項目があるのです。
遺伝要因を環境要因でカバーする
遺伝要因があっても、生活環境を整えれば病気になる確率は低くできます。
骨にとっての環境要因には食生活や運動があります。
まずバランスの良い食生活をこころがけることです。
「カルシウムが多いもの」ということに熱心になるあまり、食事のバランスが乱れてしまうようでは本末転倒です。骨はカルシウムだけでできているのではありません。タンパク質などのさまざまな物質からできています。偏食を避けてまんべんなくすべての栄養をとることです。
そして運動を生活にとりいれるようにしましょう。難しい運動やお金のかかる運動は必要ありません。ウォーキングやジャンプ体操など、からだに「たての衝撃をあたえる」運動は一人で何の道具を使わずにできる「骨をきたえる」運動です。
また最近はお薬の研究が進み、骨を効率よく強くする薬が使えるようになってきました。これらの薬により、骨粗しょう症による骨折で寝たきりになる患者さんは激減しています。