筋肉を作るよい痛み-『腰痛をこころで治す』より

リハビリと運動療法, 動かして治す

先月出版した私の著書「腰痛をこころで治す」を読んでいただいた先生からお葉書をいただきました。先生は大学や行政の要職を務められたご高名な先生で、私が大学に在籍して時代に大変お世話になった恩師でもあります。

お葉書には、私の本を読んでくださった感想の後、先生ご自身の体験が書かれていました。先生が50歳代の中ごろ、ぎっくり腰を繰り返していた時に、少々ハードな筋トレを行ったところ、その後すっかりぎっくり腰をおこさなくなったということでした。私が著書で特に強調していた運動療法の大切さを強調した部分を恩師に理解していただいたので、以下に本の中のその部分を紹介します。

運動に対して過度の恐怖心を持っている患者さんがいます。からだを大事にしすぎるあまり、運動はいけないものと誤って理解している患者さんが実に多いのです。これは特に最近目につく事柄です。

「運動をすると、翌日からだ中が痛くなってしまいます。これではからだを壊してしまいます」と心配顔で言う患者さんがいます。
「ちょっと運動すると、翌日には腰や背中が張ってしまって。やはり運動はやらない方がいいでしょうか」このような心配をする患者さんが激増しています。

運動をすれば翌日、筋肉痛が出るのは当たり前です。筋肉や骨は、使えば使うほど丈夫になり、大事にすればするほど弱くなる組織なのです。年をとったときにどれくらい筋肉量があるか、どれくらい骨がしっかりしているかで、寝たきり度が変わってきます。

運動をした翌日の筋肉痛は、筋肉が新しく作られる時の「よい痛み」なのです。これに対して筋肉を使わずに長時間パソコンに向かい合っていると出てくる肩こりは、筋肉の「悪い痛み」です。この二つをしっかり区別して「よい痛み」を感じる運動を取り入れた生活をすることが重要です。

ところが最近、よい痛みも「痛み=からだに悪いこと」と考えて運動をしない人がとても多いのです。
スポーツ選手はトレーニングをして、筋肉痛を感じながら筋肉を増やし、からだを作っていきます。運動を続けてからだができてくると、筋肉痛を感じなくなります。久しぶりに運動をするとからだ中が痛くなるのですが、それを一週間続けているとからだが慣れてきて、痛みが消えていくことを多くの人が体験しています。

このような痛みは「筋肉を作るよい痛み」なのに、それを病的なものとして避けて、からだを動かすことに恐怖を感じる、という神経症的な患者さんが非常に多くなってきています。まさしく現代的な徴候のひとつです。このような思考傾向は恐怖回避信念と呼ばれ、筋肉が作られる時のよい痛みにもかかわらず、痛みを恐れるあまり体を動かすこと避けるようになり、寝たきりや閉じこもり、うつ状態を引き起こす要因にもなります。

どのような患者さんに多いかというと、70歳過ぎの高齢の患者さんに多いのです。このようなことは私が医師になった二十数年前にはあまりありませんでした。そのころの患者さんにはあまり見かけなかった運動恐怖の患者さんを最近よくみかけます。

運動をおそれず、翌日のからだの張りや痛みを乗り越えて、しっかりとした筋肉を作っていくことが肩こり、腰痛、関節痛の最も大切な予防法なのです。

松本市内の本屋さんにも私の著書をおいていただいています。MARUZEN松本店さん、リブロ松本店さん、未来屋書店東松本店さんではポップもつけていただきました。
他にも中信地区の書店さんの多くにおいていただいているようです。ありがとうございます。
腰痛を通してみた現代の医療事情をぜひ読んでいただきたいと思っております。
(写真は未来屋書店さんとMARUZENさんです)